研究概要 |
1.口腔上皮細胞のTLR系ならびにNOD系分子発現 口腔上皮細胞は様々なTLR系分子を発現すると言われているがTLR4発現に関しては否定的な報告もある。そこで、口腔上皮系細胞ならびにプライマリーカルチャーを供試してTLR系(TLR1〜9)遺伝子発現に加えてタンパク発現をフローサイトメトリーならびに免疫染色法によって検討したところ、これら全ての分子を明瞭に発現していることを証明した。加えて、ペプチドグリカンの細胞内レセプターとされるNOD1とNOD2分子の発現に関しても同様の方法で検討したところ、口腔上皮細胞はこれら分子も恒常的に発現していた。 2.様々な上皮細胞のTLR系ならびにNOD系分子発現 (1)の知見より、口腔以外の上皮細胞についても同様の方法で検討した。その結果、舌・唾液腺・咽頭・気道・食道・肺・肝・腸・子宮頚上皮は恒常的にTLR2,3,4,7,NOD1,NOD2分子を発現していた。 3.各種上皮細胞のTLR系ならびにNOD系を介する抗菌因子産生 口腔上皮細胞を各種TLR系ならびにNOD系リガンドで刺激しても、炎症性サイトカインを産生しないとの知見を我々は得ていた。そこで対象を各種上皮細胞に広げて検討したところ、ほとんど全ての上皮細胞も同様に各種TLR系ならびにNOD系リガンド刺激に対して炎症性サイトカインを産生しなかった。しかしながら、ベータデフェンシシやCAP18といった抗菌因子産生を指標に検討したところ、口腔上皮のみならず各種上皮細胞はリガンド刺激に応答して、抗菌因子を産生した。 ペプチドグリカン認識タンパク(PGRP)も抗菌因子として作用することが知られている。口腔上皮細胞を各種TLR系ならびにNOD系リガンドで刺激するとPGRP発現が顕著に増強された。しかしながら、口腔以外の上皮細胞では各種TLR系ならびにNOD系リガンドで刺激してもPGRP産生誘導作用はほとんど認められなかった。
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