研究概要 |
背景 : 我々は腰椎椎間板ヘルニア患者のDNAサンプルで、大規模な相関解析を行い、CILP遺伝子(cartilage intermediate layer protein)のI395Tにおいて有意な相関を見出した。さらにin vitroの機能解析から、CILP蛋白の高発現が椎間板変性に関わる可能性を見出した(Seki S, et.al, Nature Genet, 2005)。 研究の目的 : CILPトランスジェニックマウス(以下Tgマウス)を作成し、表現型の解析やin vitroにおけるCILPの役割を詳細に検討することで腰椎椎間板ヘルニア、椎間板変性の発症メカニズムの一端を解明したいと考える。 方法 : CILP Tgマウスの作成の方法は、軟骨特異的発現ベクターpNASSβ(3(COL11A2promoter、IVS1)を用い、このベクターにCILP遺伝子(C末にHA tagを挿入)を導入しマイクロインジェクションによってTgマウスを作成する。またこのTgマウスを用い、表現型を解析する。 結果 : CILP Tgマウスのlineの維持および繁殖 遺伝子導入はPCR、mRNAはreal-timePCR法で確認し、CILP蛋白の発現解析は、HA抗体、N末、C末抗体の3種類使用し、これらでウエスタンプロット、免疫染色でTgマウスにおけるCILP蛋白の発現を確認できた。 CILPTgマウスの表現型の解析 椎間板の構造(髄核、線維輪)を、組織学的に確認すると、サフラニン-O染色にて髄核組織の染色性が有意にTgマウス群で低下していた。さらに作成した各系統間ごとに脊椎椎間板をMRIで評価すると、Tgマウスの腰椎MRIT2強調画像において、腰椎椎間板の輝度はノーマルマウスと比べて低下していたことから、明らかな椎間板変性の進行が認められたと考えられる。また各系統間のTgマウスとノーマルマウスで、腰椎レントゲン上の椎間板高の違いを有意に認めている。 CILPTgマウスの頚椎椎間板変性、ヘルニアモデルの作成 マウスの頚椎に不安定性を導入すると頚椎椎間板変性、ヘルニアができることがわかっており、このモデルで、変性誘導後の頚椎椎間板が、各系統でどのように変性度合いが違うか、現在評価中である。
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