研究概要 |
本年度は,まず,多連結ロボットに代表される大規模動的システムに対して,パラメータ変動のような不確定要素を,状態に依存するノイズを含む伊藤確率微分方程式によってシステムを表現することを目標とした。その後,このような大規模システムに対して,統計的ナッシュゲーム問題を定式化し,均衡解を得るための統計的連立型リカッチ代数方程式(CSAREs)を導出した。特に,CSAREsを解くことに対して,本年度は数値計算アルゴリズムの開発を中心に行った。具体的に得られた知見は以下め通りである。まず,'統計的線形レギュレータ問題の結果を,統計的ナッシュゲーム問題に応用することによって,均衡戦略を達成する戦略対を定式化した。続いて,CSAREsを解くために,ニュートン法の適用を第一に考えた。ニュートン法の適用にあたっては,収束に関して,初期値が非常に重要な役割をはたすため,CSAREsの解のユニークさと漸近構造を詳細に研究した。解のこれらの特性を利用し,ニュートン法に基づいている数値アルゴリズムを導出した。数値計算アルゴリズムがニュートン法に基いているので,二次収束と局所的なユニークさが保証される。さらに,ニュートン-カントールビッチ定理によってこれらの性質が厳密に証明された。続いて,ニュートン法に現れる非常に大きな次元のマトリックス計算を回避するために,2つの不動点アルゴリズムを結合した。その他の重要な特徴として,再帰的解に基づいている高近似を満足する戦略集合を提案した。結果として,より良いパフォーマンスが達成されることを証明した。最後に,シミュレーションの準備を行うために,既存のクラスタの台数増加。並びに,関連するソフトウェアの開発及び整備を行った。来年度は,数理的に導出された結果を踏まえ,シミュレーションによって,理論の妥当性,および評価・検討を行う予定である。
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