研究概要 |
本研究課題のテーマはデータからの知識獲得について, 特に知識の持つ階層構造の抽出の立場から高性能アルゴリズムの開発, もしくは計算複雑殿解明を明らかにすることにあった. 申請者がこれ以前に取り組んできた論理関数を用いたデータ解析について研究の立場から見ると, 人間が理解しやすい構造(たとえば階層性)を持った知識はある特別なクラスに属する論理関数の抽出問題として捉えることができる. 概念のもつ階層性は, 知識構造における本質的な性質の一つであり, 既存の手法によって得られた知識整理などの面においても重要な役割を果たすと考えられている. 本研究は, これらの問題に対するモデル化・計算複雑度の解析を通して, このテーマに対する効率的なアルゴリズム設計を目指すものであった. 最終年度である今年度は, (これまでの年度で得られた知見から)知識構造をグラフとしてモデル化した際に現れる最適構造抽出に関する問題について, また得られた知識構造を蓄えた知識ペースから, いかに効率的かつロバストに演繹を行うかについて, の2点に焦点を絞り取り組んだ. 前者に関しては知識構造をグラフとして表現した際に, 関連知識をクラスタ化する問題において, そのクラスタサイズをバランスさせる問題をバランス化尺度の最適化問題として定義することにより, 高速なアルゴリズムを設計することに成功した. 後者に関しては, ロバストな演繹は一般には(残念ながら)計算困難であることが判明したが, 実際上の利用でよく現れると考えられる「短い表現」の知識活用に限定すると, 十分高速な演繹が可能であることが判明した.
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