並列計算のための計算の構造をデータ構造の観点から捉え、その定式化を行う研究を進めている。これまでは、そのような並列データ構造としては単純なデータ構造であるリスト構造が主な研究対象であった。平成19年度は、そのような並列データ構造として木構造(二分木)を取り扱うための定式化に関する研究を中心に行った。具体的には、任意の与えられた二分木を表現することができ、かつ、高さが均衡している、というような新しいデータ構造「平衡三分木」の概念を提案し、その上で定義される計算に関して成り立つ必要がある性質などについて調査した。「平衡三分木」の概念は、木を取り扱う並列計算に対する新しい手法を与えうるものである。この内容について、日本ソフトウェア科学会の大会で発表し、さらに進めた研究内容を国際会議や論文誌への投稿する準備を行った。 昨年度から継続している木構造に対するスケルトン並列プログラミングの手法と実現に関して、コンピュータソフトウェア誌への論文や複数の国際会議での発表を行った。また、これらの木構造に対する並列計算手法が、リスト(配列)においても新しい知見を得ることにつながることを示し、情報処理学会論文誌:プログラミングにて発表した。また、タスク並列処理のためのスケルトン並列プログラムのスケジューリングに関しては、比較的近い分野で研究を進めているフランスのYves Robert教授のグループと短期の共同研究を行い、研究を進めている段階である。
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