平成19年度では、高度な前処理手法であるマルチグリッド・マルチレベル型前処理の適切なパラメータ設定に関する研究を行った。平成18年度に開始した当該研究の過程において、研究代表者は陰的マルチグリッド法と呼ぶ、全く新しいマルチレベル・マルチグリッド型反復解法を考案した。平成19年度において本手法の概念を確立し、情報処理学会論文誌(コンピューティングシステム)に発表した。また、同研究について平成19年度情報処理学会山下記念研究賞を受賞した。さらに平成19年度中において、陰的マルチグリッド法の解法を包含するExplicit/Implicit Error Correction法を提案した。本手法は線形反復法における新しい誤差修正フレームワークを提示するもので、既存のいくつかの方法が本フレームワークにより記述されることを初めて指摘した。また、すでに本フレームワークを活用した他研究グループによる成果発表も行われている。本フレームワークを利用することにより、高度な前処理手法とライブラリ化されている様々な線形ソルバとの連携が容易となり、解法選択の幅が広がるほか、解法選択ルーチンの開発が大幅に簡便化される。
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