ピアツーピア分散処理環境の利便性を向上させるため、実行時におけるノードの起動・停止を考慮した分散ファイルシステムを設計した。また、ノード間通信に分散ファイルシステムの管理情報を添付する手法を開発した。2年計画の最終年度である今年度は、以下の3点の作業を行つた。 1.自律的にデータを自己再生するために必要な情報と、その粒度、物理配置の選択方式について検討した。その結果、データの変更履歴と定期的なスナップショットが有効に利用できること、およびこれらの情報を冗長・分散配置することが有効であることがわかった。 2.ノード間通信に管理情報を付加し、1.の情報を低オーバヘッドで交換する手法を検討した。応用プログラムの実行中に、ノード間で行われる明示的な通信の他、同期やロックのような情報交換にも管理情報を付加することが有効であることがわかった。 3.管理コストを最小化するために、応用プログラム側からヒント情報を提供するAPIを決定した。応用プログラムが扱うデータ構造によっては、ファイルアクセスのパターンが静的に予測できる場合があり、このような情報がヒント情報として有効であると確認できた。 これらの結果、分散ファイルシステムの一部を担うノードが停止した場合においても、他のノードで実行中の処理を継続して行える可能性を高めることができた。また、管理情報の交換にかかるオーバヘッドを最小限に抑えることができた。
|