階層型クラスタにおいて他ノードへの直接メモリアクセスを可能とするため、IPv6対応のクラスタ間RMA(Remote Memory Access)システムの実装技術について研究を行った。この技術は、本研究代表者が既に開発した階層型クラスタ向けRMAシステムについて、IPv6プロトコルに対応させたものである。以前のシステムではIPv4プロトコルを用いた実装であったため、使用可能なIPアドレス数の制限により、全計算ノードにグローバルアドレスを割り振ることができなかった。その結果、クラスタ内のノードには、クラスタ内のみで利用可能なプライベートアドレスを設定する必要があるため、他クラスタとの通信には、各クラスタに設置した中継ノードを経由した間接的な通信を行う必要があった。一方、本研究で開発したRMAシステムは、ベースとして用いるインタアーネットプロトコルをIPv6とすることにより、利用可能なIPアドレス数がIPv4に比べて格段に増えるため、全ノードにグローバルアドレスを割り振ることができる。これにより、中継ノードを介さず全ノード間で直接通信を行うことが可能となった。この技術を、2セットのクラスタ間で実装し、評価を行った。各クラスタはノード間接続のネットワークとして汎用ネットワークEthernetおよび高性能ネットワークMyrinetの2系統を用いている。また、クラスタ間はEthernetで接続されている。このうちEthernetを介したRMAシステムとして、本研究で開発したシステムを用いた。これは、クラスタ間での遠隔メモリアクセス時に用いる。一方クラスタ内通信には高性能なMyrinetを用いる。これにより、階層型クラスタの性能を生かした並列計算を行える基盤を整備できた。
|