昨年度開発した、階層型クラスタにおいて他ノードへの直接メモリアクセスを可能とするIPv6対応のクラスタ間RNA(Remote Memory Access)システムの実装技術のための通信最適化技術に関する研究を行った。本研究で開発したRMAシステムは、ベースとして用いるインターネットプロトコルをIPv6とすることにより、中継ノードを介さず全ノード間で直接通信を行うことが可能となった。その結果、階層型クラスタシステム全体を透過的に一台の並列計算機として扱うことが容易である。そこで通信最適化技術として、プロセス配置の最適化に関する技術、及びシステム全体で行うブロードキャストや総和などの集団通信を高速化する技術について研究開発を行った。プロセス配置の最適化については、プログラム中の依存関係、及び実行中に行われる通信のタイミングを考慮し、ネットワーク上でのアクセスの集中を可能な限り回避するためのプロセス配置を探索する技術について実装し、効果を確認した。実験の結果、特に本研究で扱っているような階層型のネットワーク構造において、この最適化技術が有効であることが分かった。一方集団通信最適化技術としては、実行時の負荷状況を調べ、その結果をもとに内部の通信順序を最適化する技術について実装し、効果を確認した。実験では疎行列同士の積を計算するプログラムを用い、最大で通信時間を40%程度短縮できることを示した。さらに、集団通信のアルゴリズムを実行時の計測結果を基に自動選択する技術についても実装し、効果を評価した。実験では、さまざまな負荷状況や通信状況について、自動選択を行う場合と予め決められたアルゴリズムのみを用いる場合とで性能を比較し、ほとんどすべての場合についてこの自動選択技術が最適なアルゴリズムを選択することを確認した。
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