研究概要 |
本課題では,免疫系の戦略(移動系と静止系の構成割合,細胞間での巧みな相互作用など)に着目し,移動型センサを含むアドホックな無線センサネットワークに対して,「ネットワークシミュレータ」と「実験用センサネットワーク」の両方を用いて,移動ノードを導入するメリットを探ることが目的である。今年度は,「複雑ネットワーク上でのシミュレータによる検証」と「実験用ネットワーク上での既存手法の性能評価」を実施した。具体的には以下の通りである。 1.シミュレータ:従来研究ではランダムなネットワーク構造を診断対象にしてきたが,実世界のネットワークの特徴をよりうまく説明できる複雑ネットワークが近年多くの注目を集めている。そこで,基本的な複雑ネットワークモデル(スモールワールドネットワークとスケールフリーネットワーク)上で免疫型相互診断モデルを実行し,ノード数やリンク数を変えたときの診断性能への影響を調べた。その結果,診断モデルの分散性によりノード数が増加しても検出率は変わらないことが確認された。その一方で検出率はリンク数と平均最短経路長に依存することが分かった。今回の成果は,実世界の大規模な複雑ネットワークの診断に適用する際に有益な情報を提供するといえる。これらの結果を整理して国際会議KES2007および第17回インテリジェント・システム・シンポジウムにて発表した。 2.実験用ネットワーク:音/光/温度/加速度などを測定できる無線センサ8個とセンサデータを受信して解析を行うノート型パソコンからなる実験環境において,静止センサノードだけからなる実験用センサネットワークに対して既存手法を実装して性能を調べた。今後の研究計画として,今回の静止ノードだけの場合と今後行う移動ノードも導入した場合を比較し,移動ノードを導入するメリットを明らかにする。
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