可搬性のあるデータ形式をサポートする大規模並列入出力を実現するため、日本原子力研究開発機構 システム計算科学センターで開発された異機種計算機間通信ライブラリStampiをべースに、計算アプリケーション向けに開発された可搬性のあるデータ形式をサポートする並列入出力システムであるParallel netCDFインタフェースを計算機間でも透過的に利用可能にする機能の設計・開発を行った。Parallel netCDFでは、Message Passing Interfaceで定められている派生データ型を用いた非連続データパターンによる並列入出力を利用しており、これを計算機間でも利用可能にする集団型並列入出力機能の実装と性能評価を行い、この機能の有用性を確認した。 次に、広域ネットワークなどの通信遅延が大きい環境では、計算機の標準のネットワーク設定では通信帯域を十分に活かす事ができない問題がある。本研究のような計算機間でデータ通信を行うシステムでは、通信帯域を最大限利用可能にすることが重要であるため、遅延時間による性能低下を隠蔽するための検討並びに実装システムの評価を行った。その結果、ソケットバッファサイズなどに対し、遅延時間に見合ったネットワーク設定を施すことにより、性能低下をなるべく低く抑えられることが可能であることを確認した。さらに、Grid MPIプロジェクトで開発されているPSpacerを利用したデータ転送の最適化も確認した。 次年度はこれまでの研究成果をまとめ、システムの完成度を高める検討を行いたい。
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