本研究では、Webコンテンツ同士のつながりであるハイパーリンクを、実質的な情報連携が可能な姿にするための仕組みを明らかにし、その基本的なアルゴリズム、試作システムを構築することである。本年度は、従来より研究を進めてきたコンテンツ主導のイベント通知モデルに対して、各種の集約の効果などを見積もることを進めてきた。また、従来の通知方式にある、情報の不整合を防止するための3種の待ち時間のうち、2種について、待ち時間の管理を行わなくても済むリビジョン管理方式を開発した。具体的には、通知範囲問題、間接上書き問題、先行破棄問題のうち、前2者について待ち時間管理を行わなくても良い見通しを得た。これによって、推移的同期化がより容易に制御可能であると考えられる。制御の容易性は、本研究の目的である設計と試作にあたって、プログラムによる実装の際に重要となる観点であり、引き続き残る待ち時間管理の実装的解決法を探る予定である。 アルゴリズムの設計と並行して、試作システムの開発も行った。これは、実装可能な比較的安定したアルゴリズム部分についてプログラムを実装し、アプリケーションを含めて開発することで、本研究の有用性や実用性を検証するプラットフォームである。アプリケーションとしては、ハイパーリンクの粗密がコンテンツ単位でわかるようになることを利用して、P2Pコンテンツの流通の効率化を狙ったP2Pコンテンツ流通システムを試作した。これは、P2Pオーバレイネットワークをハイパーリンクの密な部分に沿って構築することで、検索、配送両面での効率化を狙ったものである。また、利用者が直接的に閲覧するメタデータの例として、RSSの配信を行うシステムも試作した。適当なブラウザと組み合わせることで、リンク空間的に近傍のコンテンツのRSSを一括して配信を受けることができる。
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