研究概要 |
分散オブジキクトシステムでのインテグリティ制約の保証、システムのスループットの最大化、情報システムの安全性の向上のための研究として同時実行制御方式,アクセス制御方式の研究が行われている.現実世界での仕事の優先順位は,仕事の目的と実施者の役割をもとに決定されるにも関わらず,従来の同時実行制御では,「早いもの勝ち」および「トランザクションの起動時刻印の順序」でトランザクションを直列化して実行する.また,役割の概念を用いたアクセス制御方式は研究されているが,役割の概念を用いた同時実行制御方式は研究されていない.すなわち,従来方式では,現実世界での仕事の目的と実施者の役割を反映した情報システムの構築ができない.本研究は,トランザクションの目的と利用者の役割の重要度を明確に定義し,複数のトランザクションをその目的と利用者の役割め重要度を基に直列化して実行する新たな同時実行制御を提案することを目的としている. 平成18年度は,現実世界での利用者の役割と仕事の目的を情報システム内のユーザとトランザクションに付与されたアクセス権の集合と定義し,アクセス権を構成するメソッドとオブジェクトの優先度を定義することで,情報システム内でのトランザクションの目的と利用者の役割の重要度を明確に定義した.システムの利用者がトランザクションを発行するとき,発行したトランザクションには,利用者に付与された役割の一部が付与される.そこで,定義したトランザクションの目的と利用者の役割の重要度を基に複数のトランザクションをその目的と利用者の役割の重要度を基に直列化して実行するスケジューラの設計および実装を行った.実装したスケジューラのアルゴリズム検証を行った結果,トランザクションの目的および利用者に付与された役割の重要度が高いトランザクションが優先して実行されていることが確認できた.
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