本研究の目的は、会議における共有資料に対して付与される複数のメモ、つまりアノテーションから個々の視座を推定しつつ図解化をおこない、それを共有することによって会議全体のアーカイビングとその再利用を実現する基盤システムを構築することにある。これに向けて、今年度は主に1"アノテーションのクラスタリングアルゴリズムの確立"と2"共有資料とアノテーションを用いた議論図解化システムの構築"に取り組んだ。1では、単なる文字ベースのアノテーションではなく、アノテーションにユーザの意図を織り込むことができる一種のフォークソノミーシステムを数百人規模の学会支援システム上で運用した結果のデータ分析をおこなった。このシステムでは、他人のアノテーションを協調フィルタリングやTFIDFなど複数の推薦アルゴリズムをもちいて推薦する機能があり、この結果からアノテーションの使用傾向や、指示文字列の分析等をおこなった。2では、DOMを用いたアノテーション付与インタフェースを開発し、SlidyをはじめとするHTMLベースのプレゼンテーションフレームワーク上でのアノテーション用ライブラリを開発した。このライブラリは、XHTML+CSSで表現されたプレゼンテーションファイルをJavaScriptをもちいてDOMの解析と操作をおこなうことで閲覧者によるマーキングとアノテーションを実現する。本研究が対象とする議論資料に対するアノテーションと図解化において、元となる議論資料の視認性等が損なわれては意味がない。しかし、今年度のライブラリをもちいた場合実世界での付箋紙やペンによるアノテーションも多くなれば対象資料の視認性が低下するのと同様の問題がおこる。このような共有資料とアノテーション双方の共存が継続検討課題である。
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