今年度は、既存のアプリケーションの広視野ディスプレイに対応させるための手法として、1)アプリケーションの動的リンクライブラリ機構に介入することで機能追加・変更を行う技術、2)アプリケーションからの出力映像のみを用い、その時系列的な流れより欠損した周辺情報を再構築する技術、の2つに関して研究を行った。 1)に関しては具体的な実装を行い、実際の没入型ディスプレイ上にて多数のアプリケーションを実行させる段階まで到達できた。また、他の研究プロジェクトで必要となるアプリケーションを本手法によって大型ディスプレイ対応させることで、より実践的な応用の可能性も明らかにできた。これらの結果をまとめてジャーナル論文として投稿し、すでに掲載されている(研究成果を参照)。 2)に関しては、1)のアプローチではアプリケーションプログラムへのアクセスが可能であることが条件であったが、実際にはそのような状況は特殊であり、アプリケーションから出力される映像のみが与えられるケースの方が大多数を占めている。そこで本アプローチでは、近年のインタラクティブコンテンツの代表であるゲームコンテンツに着目し、中でも3次元空間中を移動するような状況において、その際に得られる時系列映像に含まれている過去の周辺情報を仮想奥行きモデルを用いて抽出するアルゴリズムを構築した。これは従来の平面近似を用いたビデオモザイキングに比べて歪みの少ない空間再現が可能であり、また高精度な3次元奥行き推定と比較してリアルタイム実行が可能である。 本研究では、これを実際の3画面PCクラスタ、並びにマルチプロジェクションディスプレイ上において実装を行い、コンテンツの広視野化による没入感への影響などを調査する研究に応用を試みた。また、それらの結果を国内の会議において報告した(研究成果を参照)。次年度は本アブローチに重点を置き、実時間においてより空間再現性の高いアルゴリズムの構築を試みる予定である。
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