研究概要 |
大学病院では診療行為の標準化と質の向上に取り組み,入院や手術等の高度で専門的な医療を必要とする患者が,医療費抑制の観点から計画的に短期間で退院できることを目指す必要に迫られている.その方法として,クリニカルパスを作成する取り組みが行われているが,個々の患者の入院治療実績を元にクリニカルパスを作成しても,他の新規入院患者には当てはめられないという問題が生じている.本研究は,標準的な診療過程と特殊な診療過程が入り混じった大学病院の病院情報システムの蓄積データから診療行為に関係のあるデータから診療過程を抽出・分類・集約することで,医療従事者が主観的に作成したクリニカルパスと同様な診療過程が抽出できるか,疾患別の診療過程の共通部分を抽出し多くの入院患者に適用できるかを明らかにしようとすることにある. 診療過程の抽出に向けて,初年度は,在院日数にばらつきがあり計画的でないと短期間に退院できない疾患かどうかについて,在院日数分布の傾向把握から着手する必要があった. 自病院の個々の退院事例に対し,在院日数から診断群分類に属する疾患毎に定められた在院日数の全国平均を引いた値によって,在院日数差の度数分布を構成する方法について提案した.この方法から,以下のことが分かった: (1)通常の在院日数分布であれば同一疾患であっても手術の有無等で在院日数は大きく異なるため,類似疾患の在院日数分布を混合すると分析不能になったが,在院日数差の度数分布を構成することで類似疾患の在院日数差分布を混合したり,類似疾患同士の在院日数を比較したりすること可能となった. (2)これまでは,自病院の平均在院日数を短縮するには前年度等の実績を参考に目標設定していたが,提案した方法により,在院日数を何日縮めるのかを疾患毎に目標を設定することで,自病院が設定した平均在院日数の目標を達成できるかが分かるようになった.
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