研究概要 |
本年度は研究の初年度であるので,三年間の基礎となる手法の研究を行った. まず初めに行ったのが,対象を切り出す方法の研究である.近年,局所カーネルの有効性が報告されているが,どのような局所カーネルが有効であるかは検出対象に依存してしまう.従って,検出対象に適していない局所カーネルを利用した場合には充分な精度を得られないと考えられる.そこで,検出対象上の全ての位置に様々な大きさの局所カーネルを配置し,それをAdaboostにより選択した.局所カーネルの重みづけ和もカーネルになるので,1つの局所カーネルの出力値を弱学習器にリンクさせると,Adaboostにより得られた統合識別器が検出対象に適した重みづけ和カーネルとなる.得られたカーネルを用いてSupport Vector Machineで学習することにより,従来の方法よりも精度が向上することを確認した.この成果を国内の会議及び国際会議で発表した.また,提案手法を向きの変化する環境下でも対処できるように拡張した.さらに,局所カーネルだけでなく,大局的なカーネルも併せて統合することでより一層精度が向上することを確認した.この成果を3月の国際会議で発表する. 次に,動画像理解の基礎となる対象追跡の研究を行った.実際の環境下では追跡対象の一部が見えなくなる隠れの問題がある.この問題に対処するために,追跡対象を局所領域に分割し,各局所領域に識別器を置いた.そして,各識別器の出力を重みづけ統合することにより最終的な判定を下ようにした.識別器の出力を統合する際に隠れた部分の重みを低下させれば隠れに対処できるが,実際にはどこが隠れるか事前には分からないので,システム自身が適応的に判断しなければならない.ここでは,識別器統合の際の重み空間内での追跡対象の事後確率が高くなるように重みを選択することにした.重み空間内での事後確率分布は動的に変化するので,任意の非線形分布に対応できるパーティクルフィルタを用いた.これにより,隠れが動的に起こるような環境下でも対処できるようになった.この成果も国内の会議及び国際会議で発表した.
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