研究概要 |
近年,自動車の社会問題の対策として,道路を走行中の運転者に対し,道路情報,交通情報,沿線情報などを提供するシステムが実用化されつつある。そこで,広域道路交通状況をリアルタイムに収集・解析することは次世代高度道路交通システム(ITS)の構築において不可欠な要素技術である。現在の道路交通情報センサの中で,一般的に使用されているものは,超音波式,ループコイル式および光式である。これらは安定で高信頼性を持つが道路の代表的な区間に設置し,局所的な情報を取得するものであるため,空間的な広がりを持った情報を取得することができず,追跡のような高度な処理ができない。また,新設や変更も容易ではない。一方,画像を利用した道路情報の収集が実現されれば,落下物や事故,避走といった様々な空間的な道路情報も取得することができ,利便性が高い。しかし,従来の画像処理手法では,ほとんど単眼によるもので,カメラの設置位置や方向によって,車両同士の遮蔽(オクルージョン)問題が生じてしまい,計測精度が悪くなる。更に,カメラ1台ずつ独自に監視計測タスクを果していて,カメラ同士の間で計測データの共用またはハンドリングができないため,広域時間と空間で連続的な交通情報を得られず,運転者および交通/道路管理者により正確な道路交通情報を与えられない。 本研究では,広域大規模道路監視カメラネットワークを知的に統合することによって,次世代道路交通計測システムの構築に関する基盤技術を研究開発する。その一環として,本稿では,複数台カメラのデータ統合を用いて広域多車線道路環境での交通計測手法を提案する。また,対象物を連続的に監視するために,広域に散布される監視カメラを「クラスター」「グループ」と「ネットワーク」という3レベルに分解し,効率良く情報をハンドリングできる知能型道路交通監視システムの構成を提案する。カメラクラスターの各カメラから計測されたデータを同一空間に統合する必要があるため,本研究では,確率フュージョンマップ(PFM : Probability Fusion Map)の概念を提案して、複数台カメラのデータ統合を用いて従来の道路交通計測方式では困難である車両同士の重なり問題と車両3次元形状計測問題を解決する。様々の路上実験より本研究の有効性が示された。
|