研究概要 |
本研究は,人と人のコミュニケーション成立条件の数理的理解に向けての基礎研究である.生物の生存に不可欠な実時間情報処理とコミュニケーションとが密接に関係していることに着目し,実時間情報処理の数理的本質を理解することを目的とする.本年度の成果は以下の通りである. 1.CCDカメラ,大型ディスプレイ,PCから構成される協調的視覚目標追従手動運動実験装置を構築した. 2.構築した装置を使い協調的目標追従運動実験を行った.2秒程度の周期で運動する円運動に対して追従した後に,2人の被験者がお互いのカーソル(手の位置を示す)を追従するようなタスクを課した結果,協調追従時の手の運動の角速度スペクトルについて,基準円運動の周期,倍周期付近の成分は,基準円運動を追従している時のそれと比べると低いことが分かった. 3.協調追従運動モデルの基本となる手動運動モデルの摂動解析を行った.系の時間遅れと時定数が同等の場合,広く先行制御の特性を示すことがわかった. 4.手動運動の脳内情報表現を探るため,手動運動時の筋電計測を行った結果,手動運動がパラメトリックな表現となっていることが示唆された. 5.個々の手動運動モデルを結合させたモデルを構築した.現在,このモデルの解析を行っており,実験との対比で,協調追従運動と先行制御との関連を調査中である.
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