今年度は、入浴行動計測システムの改良を主に行った。具体的には大学の研究室に設置してある浴室実験室にて、浴室内物品の位置をリアルタイムで確認できるRFIDシステムの改良と制御ソフトウェアの開発を行った。これまでは、アンチコリジョン機能のないRFIDを用いていたため、タグを取り付けた浴室内の物品すべて位置を把握することができなかったが、アンチコリジョン機能を持つタグとリーダを導入することで、間近にある物品も問題なく位置を把握できることになった。また、このシステム導入には、複数のRFIDリーダ設置をする必用があり、電波干渉回避を行うためのリーダ装置の同期制御が容易に行えるソフトウェアライブラリも開発した。加えて、ユビキタスコンピューティングシステムとしての可能性を広げるため、浴槽の縁の内側に静電容量式のタッチセンサを設置し、入浴者が浴槽縁を触れた場所を検出できるようにもした。これらのシステム改良については、平成19年5月下旬の情報処理学会ユビキタスコンピコーティングシステム研究会にて発表する。 また、浴室環境での入浴者の行動を理解して、照明や健康管理・安全管理などを知的制御・判断するために、入浴行動をモデル化する研究にも取り組んだ。今年度は、以前の研究にて浴室での入浴行動と利用する物品についてアンケートを実施(50名程度の回答者)したので、そのアンケート結果の分析を行い、マルコフモデルによる行動モデル化を試みた。まずは単純なモデル化として、0次と1次のマルコフ過程の組合せ、実際の行動の順番や利用物品との整合性を確認したところ、85%程度の結果が得られた。しかし、以前のアンケートの仕方に不備や問題点があることがわかったので、今年度には新たにアンケートを実施し直した(約130名ほど)。この結果については、今後、隠れマルコフモデルやベイジアンネットワーク等によってモデル化を試みる予定である。
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