本年度は、視覚障害者のための自律移動型歩行補助システムの基礎設計および検討を行った。特に、駆動系と巻き取り式の手綱に関する設計が重要であり、困難であることが分かった。 駆動系においては、検討の結果、ロボコンの相撲ロボット等で用いられる技術を応用し、ラジコン用のサーボモータを用いて車輪を駆動させる手法が適切であると判断した。これに、巻き取り式の手綱から得られた情報を用いてユーザと歩行補助システムとの相対速度を求め、ユーザに違和感無く追従する速度制御機構を歩行補助システムに搭載する予定である。この速度制御機構の概要としては、混合整数計画を用いた線形計画法を応用して、巻き取り式の手綱から得られる情報よりサーボモータの適切な動作パルス間隔を導出する手法を検討している。この混合整数計画を用いた線形計画法に関するアルゴリズム、プログラム等の開発は本年度で大幅に進めることができた。 巻き取り式の手綱の設計に関しては、現在も検討中である。これは、手綱という応力が集中する部分に、テンションを計測する装置という繊細なセンサを搭載しなければならないという設計的矛盾が生じるためである。現段階では、フレキシフォースボタンセンサを用いるのが適切と思われるが、最大測定荷重、測定分解能、耐荷重に対する見積りを今後も充分に検討・実験しなければならない。また、転倒等の衝撃からセンサを破断させないための機構作りも、さらに検討を行い改良する必要があることが分かった。
|