本年度は、視覚障害者のための自律移動型歩行補助システムの制作と危険感知装置の検討を行った。 本システムの基本的な駆動系の制作は終了した。しかし、様々な計測装置の搭載を前提として大きめのモータを搭載したために、バッテリ系の再考が必要となった。バッテリが弱くなったときでも安定して回路(特に危険感知装置)に電力を供給するためには、バッテリ以外に太陽電池などの2次電源を搭載するか、バッテリの電圧降下に応じてモータの最適制御を行うか、省電力で運転可能な回路への電圧を計画的にセーブする機構等を検討する必要があろう。 危険感知装置としては、これまでは、超音波距離測定器を複数台用いることで周囲の状況を把握しユーザに伝えていたが、この手法だけでは、自動車のような高速で接近する対象物に対しては危険である。そのため、新たに画像処理を用いた危機感知装置の検討を行った。これは、自律移動型歩行補助システムにCCDカメラを搭載し、システム前方の速度場を検出するごとで、システムに対して急激に向かってくる危険物を検出する手法である。今後は、この手法と従来の超音波距離測定器による手法を併用して用いる予定である。 手綱による自律移動型歩行補助システムとユーザの相対位置を検出する機構については、最終的に曲げセンサを利用することに決めた。この機構の概要としては、手綱の根元にゴム管を通し、ゴム管の曲がり具合を直接、曲げセンサによって検出する機構である。これにより、手綱の根元が緩んだか、引っ張られたかを曲げセンサで検出できるため、自律移動型歩行補助システムをユーザの歩く速さで移動させる事ができる。この機構は、手綱の引っ張り具合を手綱のテンションではなく、曲がり具合で検出するため、十分な強度を有した機構となった。
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