本研究による視覚障害者のための自律移動型歩行補助システムでは、システムと視覚障害者を繋ぐ綱の張力を測定し、視覚障害者とシステムの相対速度を検出することが主要機能となっている。そのための機構として、本システムでは、曲げセンサを用いた機構を採用しているが、本年度は、その機構の構築および制御方法、危険物に遭遇した際の回避ルール等の検討を行った。機構部の検討としては、曲げセンサの特性の分析、曲げセンサの出力値とシステム・ユーザ間の相対速度の関係を把握し、校正手法の検討を行った。そして、それらをシステムに搭載したワンチップマイコンに実装した。その結果、曲げセンサを用いた機構で歩行補助システムの速度制御が可能であることがわかった。回避ルールとしては、本システムに搭載された超音波距離計の出力値により回避ルートを想定し、最もユーザの安全を確保できるように決定した。この回避ルールの中には、システム・ユーザ間の相対速度を故意に変化させることにより、ユーザに違和感を与えて危険な状況を知らせるルールも含まれている。従来、このように視覚障害者に対して危険な状態を示すためには、音や触覚による呈示方法を用いていたが、このルールによって、新しい呈示手法を提案することができた。 ユーザの危険な状態を認識する方法として、これまで本システムで利用してきた超音波距離計に加え、動画像処理による危険物回避手法の検討も行った。また、ワンチップマイコンによるエラー検出機構を備えた無線通信回路を導入することで、ノイズに強い通信システムの検討も行った。 これらの成果より、本システムが視覚障害者の状況を把握し、安全に誘導する能力を有していることがわかった。
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