研究概要 |
オンライン学習過程および適応制御過程の力学系的過程としての特徴を,一理論と実験の両面から明らかにすることを目的として研究を行っている.平成18年度は.単純なリカレントネットワークのオンライン学習過程および離散時間適応遅延フィードバック制御過程を対象に以下の研究を行った. 【1.力学系的特異性の検証】 (1)数値実験を行い,様々な低次元カオス写像を用いた離散時間適応遅延フィードバック制御系で,通常のカオスとは異なる特異な振舞い(強い非双曲性や制御時間分布のベキ関数的減衰などの‘中立的'振舞い)が現れることを明らかにした. (2)同様に,幾つかの異なるニューロンモデルを用いた単純なリカレントネットワークのオンライン学習系でも,上記と同様の特異な振舞いが現れることを明らかにした. 【2.特異性を生みだす力学系的機構の解明】 (1)線形安定性解析を行い,力学系としての離散時適応延フィードバック制御系が,位相空間全域でヤコビ行列が固有値1を持つ特異な写像で表現されることを明らかにした. (2)同様に,単純なリカレントニュートラルネットワークのオンライン学習系の一部も,上記のような特異な写像で表現されることを明らかにした. (3)また,様々な低次元離散時間適応遅延フィードバック制御系で,パラメータの安定性境界への漸近がおこることを明らかにした. 結果として,【1】で得られた結果から,オンライン学習過程および適応制御過程では,通常のカオスとは異なる特異な力学系的振舞いが極めて普遍的に現れることがわかった.さらに.【2】の結果からは,そのような力学糸的特異性が現れる理由として,既に明らかになっているパラメータの安定性境界への漸近以外にも,ヤコビ行列の特異構造(‘中立的'固有値を位相空間全域で持つこと)があることが強く示唆された.
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