研究概要 |
ファジィシステムを設計するにあたり, 一般に精度と複雑性の間にはトレードオフの関係が存在する. 精度の高いシステムは複雑であり, 単純なシステムは精度が高くない. そこで, 精度の最大化と複雑性の最小化を目的関数とし, 進化型多目的最適化手法を設計問題に適用することで, 精度と複雑性に関して非劣な複数のシステムを手法の一回の実行で獲得する手法が提案されている. 実際にファジィシステムを利用することを考えた場合, 専門家であれば複雑でも精度の高いものを好むであろうし, 逆に, '非専門家であれば精度が落ちてでも単純なものを好むと思われる, つまり, ファジィシステムの複雑性とユーザーの解釈可能性には強い相関があると考えられる. 複雑性を表す尺度としては, ルール数がよく用いられるが, それ以外にも, ファジィ集合の重複度合いや分割数, 使用されるデータの属性数なども解釈可能性の評価尺度として用いられる. しかしながら, どの評価尺度が適切にユーザーの選好を表すかは事前には分からない. そこで本研究では, いくつかの評価尺度に対してユーザーが優先度を設定できるユーザーインタフェイスを開発し, 選好関数を探索の途中で逐次的に変更可能とする. そして, 選好関数の最大化を目的関数の一つとして追加し, 精度・複雑性・選好の3目的最適化として問題を定式化する方法を提案する. 提案手法は, 医療データからのデータマイニングや, 車車間通信を用いた車両シミュレーションの分析や, 公地価格の時系列データのマイニングなどに応用した.
|