研究概要 |
本研究課題で対象とする有歪圧縮は,インターネットなどの通信技術の発達によって不可欠な技術となっている.有歪圧縮は,主に画像や音声を対象に歪みを許容する代わりに高圧縮を目的とした圧縮方法である.有歪圧縮では,許容する歪に対してどの程度まで情報が圧縮できるかという限界が理論的に示されている.申請者が発見した多層ニューラルネットを用いた圧縮方法のほかに,低密度パリティ検査符号に基づく圧縮方法(LDGM符号)など,既に複数の理論限界を達成する有歪圧縮の方法が発見されている.LDGM符号の符号化アルゴリズムは,慣性項を導入したビリーフプロパゲーションによって導出されている.ビリーフプロパゲーションに基づくアルゴリズムのダイナミクスを厳密に解析するため,連続値を扱う離散時間同期型ダイナミクスを持つモデルを経路積分法で解析する方法について,数理的に近い性質をもつHopfieldモデルを用いて検討した.この結果はPhysical Review Eに投稿中である,また,CDMAマルチユーザ検出問題も数理的に近い性質を持っているが,この方法を経路積分法でビリーフプロパゲーションに基づくCDMAマルチユーザ検出問題に適用してみて,密度発展法による解析結果が経路積分法による厳密解と一致することを示した.この結果は日本物理学会で発表済みであり,論文をIEEE Trans.に投稿準備中である.今年度の成果から,LDGM符号の符号化アルゴリズムは,密度発展法による解析が厳密解を与える可能性があるということが示唆された。
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