研究概要 |
本研究課題で対象とする有歪圧縮は,現代の通信にとって不可欠な技術となっている.有歪圧縮は,主に画像や音声を対象に歪みを許容する代わりに高圧縮を目的とした圧縮方法である.有歪圧縮では,許容する歪に対してどの程度まで情報が圧縮できるかという限界が理論的に示されている.今年度は,申請者が発見した多層ニューラルネットを用いた圧縮方法を,原情報に含まれる0と1が偏っていた場合について理論を拡張し,シャノン限界を達成するための条件を示した.この成果は,2008 IEEE Intl sympo.on Infor.Theory (ISIT2008)で発表が決定しており,論文はPhysical Review E に投稿中である.また,疎な生成行列を用いるLDGM符号を有歪圧縮については,疎行列の行重み分布と列重み分布が典型性能にどのように影響するかを,lRSB仮定に基づくレプリカ法によって解析的に評価した.この結果については,現在Journal of Physics A に投稿準備中である.また,有歪圧縮の復号アルゴリズムと数理的に近い構造をもつ,ビリーフプロパゲーションに基づくCDMAマルチユーザ検出ダイナミクスの理論的性能評価を行なった.この結果は,2007 IEEE Intl sympo.on Infor.Theory.(ISIT2007)で発表し,現在IEEE Trans.に投稿準備中である. 今年度の成果から,LDGM符号の典型性能の重み分布依存性などが明らかになった.また,符号化アルゴリズムの符号化ダイナミクスの解析からも,性能の重み分布依存性が考察できることが期待されるが,特定の符号化アルゴリズムが,理論的な性能限界とどの程度の差があるかといった比較が可能になった.
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