研究概要 |
本年度は,複素逆問題解法のための複素ネットワークインバージョンの正則化法の枠組みを確立し,その効果を確認することを目的として研究を行った.実際には,これまで研究を行ってきた複素ネットワークインバージョンについて,不良設定性による解法上の問題点を明らかにし,さらにその問題を正則化法によって解決できることを,コンピュータシミュレーションを中心に検討した. 本研究ではこれまでに,複素領域における逆問題の簡単な例として複素写像の逆推定問題を取り上げて,複素ネットワークインバージョンの動作を確認してきた.これまでは良設定性の問題を用いて動作確認を行ってきたが,今回は不良設定性の生じる簡単な問題として,絶対値演算を含む写像問題を設定して検証を行った.すなわち,入出力が二対一の関係となる写像において出力からの入力の推定を行う問題を考えた. 複素ネットワークインバージョンにおける出力からの入力の逆推定は,学習済みの複素荷重を固定し,与えられた出力と仮入力による複素出力誤差を逆伝搬し,仮入力を繰り返し修正することによって行う.つまり,通常は出力誤差関数最小という規準によってのみ入力の修正を行うが,それに条件を加えて別の規準を与えるのが正則化の方法である.本研究では正則化として与える条件として,入力の最小化または最大化を考え,これを正則化汎関数として出力誤差関数に加え効果の確認を行った.その結果,入出力が二対一の不良設定逆問題において,与える正則化汎関数によって特定の入力を選択して推定できることが示された. 以上の通り,本年度は複素ネットワークインバージョンの正則化法に関する研究として,不良設定性の複素写像逆推定問題に入力最大または最小の正則化法を適用し,その動作を検討し効果を明らかにした.今後は,本年度までに得られた成果をもとにさらに検討を重ね,さらに研究を行っていく予定である.
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