本年度は、不良設定性の複素逆問題の解法のために、複素ネットワークインバージョンに正則化法を導入した際の効果の確認に関する研究を行った。具体的には、これまで研究を行ってきた複素ネットワークインバージョンを用いて、実際に解の存在性・一意性・安定性の3つのうち1つが満足されない不良設定逆問題を作成し、その問題を正則化法等によって解決できることを示すことを目的とした。問題としては、複素平面上の点の写像関係を学習し、任意の点に対し写像前の点を推定するという、複素写像の逆推定問題を取り上げた。 まず、解の存在性に関しては、複素平面上の点の移動変換を数点のみによる疎な学習データの組で学習し、その逆変換によって与えられた密な推定対象データに対応する点を求めた。その結果、いわゆる汎化能力により解の存在しないデータについても推定が可能であることを示した。次に、解の一意性に関しては、絶対値関数による複素平面上で解が複数存在する変換を学習し、解を最大化または最小化する正則化項を加えた複素ネットワークインバージョンによって移動する点を求めた。その結果、解が複数存在する場合に、正則化法によって特定の条件を満たす解を選択的に推定することが可能であることを示した。解の安定性に関しては、複素平面上で縮小変換を学習し、解を滑らかにする正則化項を加えた複素ネットワークインバージョンによって微小なノイズを乗じた点から移動する点を求めた。その結果、正則化法によって安定化した解を推定できることを示した。 以上の通り、本年度は複素ネットワークインバージョンの正則化法に関する研究として、実際に解の存在性、解の一意性、解の安定性の3つの不良設定性を有する問題を設定し、その問題を正則化法等によって解決できることを示した。今後は、本年度までに得られた成果をもとにさらに検討を重ね、研究を行っていく予定である。
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