研究概要 |
都市部を対象に, 都心部, 郊外住宅地, ニュータウン地区など都市を構成する典型的な地区タイプを整理し, それぞれのタイプを代表する事例を大阪周辺地区から抽出し, その土地利用特性と緑地分布の特性をGISデータと人工衛星データから整理した. そして, それらの事例についてマルチフラクタル, 空間的自己相関, エントロピの3つの指標から定量的に解析し, これらの指標の都市環境の評価指標としての可能性について検証した. その結果, マルチフラクタルについては緑地や海など自然の諸物については比較的よく状況を表現する一方で, 都市の土地利用を表現するのには, あまり適さないことが明らかにされた. これは土地利用の状況の変化が値にセンシティブに反応するためである. その一方, 空間的自己相関とエントロピについては, それぞれが異なる状態量を表現し, これらの二つの指標により張り巡らされた二次元空間上に都市の様々な土地利用パターンを付置してみたところ, 平均や分散だけでは表現し得ない土地利用の空間的分布がよく表現できることが明らかにされた. そして, 土地利用分布の特徴を定量的に表現し, 都市内のタイプの異なる地区ごとにこれらの指標の値の特徴を整理すると, 地区タイプによって異なる数値を示すことが明らかにされ, 都市の土地利用状況を示す指標としてこれらのものが有効であることが検証された. ただ, この研究では, 土地利用特性を二値データに処理しているためにこのような結果が導かれたものと考えられる. 土地利用状況を二値データとしてではなく, 適切な連続量として表現することができれば, マルチフラクタルによる検証が有効である可能性があり, この点について検証を深めることが今後の課題として導き出された.
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