研究概要 |
本研究は、目に見えにくい科学技術活動を複雑ネットワーク分析という枠組みで記述し、学術論文がイノベーションの核となっていくプロセスを、材料科学分野におけるケーススタディを通して定量的に分析することで、イノベーションプロセスに関する新たな知見を得ること、科学技術における課題設定・戦略策定に関する意思決定支援ツールの開発を目的としている。 本年度の研究では、イノベーションプロセスを過去の情報をもとにしたトレンド分析、未来のビジョンからの戦略策定プロセスであるテクノロジーロードマップという2面から分析を行なった。 前者としては、大量の文献群からトレンドをいち早く検出する方法として、学術論文の引用情報をもとに、ネットワーク分析を行なった。具体的には、ガリウム・ナイトライド分野、複雑ネットワーク分析という2つの学術分野を対象として、その中でのコア論文のネットワーク中での位置の変遷を、中心性、媒介性といったネットワーク指標を用いて追跡した。その結果、分野の勃興期においては、媒介中心性が、成熟期においては、被引用回数がその後の被引用回数を決める重要な要素であることが分かった。この結果は、起こりつつある分野における将来の重要なコア論文をまだそれと認識される以前の早期に検出することを可能とする。 又、テクノロジーロードマップにおける技術知識の構造の分析を行なった。半導体分野での有力なロードマップであるITRS、ならびに、日本のNEDOが策定している戦略ロードマップを対象に、そこに書かれている技術用語の分類に関して分析を行なった。結果、ITRS,NEDOロードマップのうち半導体分野・製造業分野においては製品・生産物の属性情報が、NEDOロードマップのうち環境・バイオ分野では製品・生産物・プロセスといった実体レベルの用語が多く記載されていることが分かった。
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