研究概要 |
本研究は,予算決定等の意思決定で重要となる収敏的支援をあわせて行う匿名保証型DSSをインプリメントし,収斂過程が実際に改善するか否かを「多数の代替案や反対案が洗練された少数案となるか否か」の視点から実証的に確認することを目標としている.本年度は,同匿名保証型システムのインプリメント作業を中心に行った。すでに昨年度の中間成果の一つとして,匿名性保証のある状況でも結果的に匿名性が失われる事例がある問題を検討して学会発表を行っている。すなわち,結果的な匿名性喪失を回避するため,個別参加者側の判断に基づき質問項目を動的に変更することを可能にする新たな参加者調査の仕組みを提案してある。本年度は,この仕組みの実装的な問題を検討しつつ,同システムのプロトタイプを構築して学会発表を行った。さらに,同システムの機能を拡張するかたちで,議論の中で議論の進め方が変わるという動的変更プロセスを含む議論の収斂プロセスを実現する機構の構築作業を進めた。同システムはリレーショナルデータベースの利用を前提としており,発言の内容を項目ごとに分けて処理し,参加者が自分の意見表明の中で自己を特徴づける可能性の高い項目を他の部分から切り離すことを可能にする機能を含む点に特徴をもつ。動作実験では同機能は支障なく動作することを確認している。また収集した内外の関連資料から判断して,この種の匿名性保証の技法は現時点でも斬新な技法であると思われる。参加者の多様なアクセス方式に耐えるインターフェースの準備のうち,問題発言に対する隠蔽支援機構の組み込みが課題であるが,設計は昨年度までに終了しており,支障なく実現できると見込んでいる。
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