研究概要 |
望ましいコンテンツ流通市場のあり方を探るための社会的影響評価を行うことが本研究の目的であり,そのために本年度は下記の2つの作業を中心として行った.一つはソフトの利用実態調査であり,もう一つはシミュレータ開発である.しかし,ソフトの利用実態調査については,利用者の違法性意識が高く,ごく身近な対象を除いては調査対象の獲得が困難であったため,来年度の課題とした.一方,シミュレータの開発にあたっては,マルチエージェントシミュレーションの手法を採用した.これは,社会の構成要素を複数のエージェントとして位置づけ、エージェント間の通信や資源の交換を模擬することで社会動態の解明を目指すアプローチである。本研究ではコンテンツ流通市場の基本モデルを初めに構築した.来年度以降を予定している技術や政策の評価は、このモデルの構造や各エージェントの内部パラメータを変化させることによって実施することが可能である。 各エージェントの行動は,P2Pソフトの持つ特性、他のエージェントの行動集合、環境(外部)変数,一期前の自分自身の行動の大きな4つのパラメータに依存するように設計を行った。また,判断アルゴリズムについてはソフトのインストール,ダウンロード,アップロードの3つの行動を軸に,いくつかの状態を設定し,それらの判断パラメータの設定によって各エージェントの基本となる判断を記述した.これらのシミュレータによって,来年度以降政策的効果の計測を行うことが可能である.
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