本研究の中心成果は『言語態分析』としてまとめられた。主に前半期に進められたこの研究では、ミシェル・フーコーの「知の考古学」における言説の概念、エミール・バンヴェニストの1960年代の仕事における発話の概念、そしてエリゼオ・ヴェロンの「創始の言説」のアイディアを柱として、「ことばの集合を分析する」ための道具立てをまずは徹底的に整理し直した。この際、文学や政治などの諸言説ジャンルを宙づりにして、発話に内在するリズムと、より大きな歴史的単位である言説におけるリズムを比較することで、歴史的分析の位置を明らかにした。 また人文学を中心としながらもゲシュタルト心理学やアーヴィング・ゴフマンの相互作用の社会学などを参照しながら、メディア論として「映像」を中心としたマルチモダリティの情報をいかに分析するのかを、写真や新聞記事などを用いながら具体的に呈示した。 研究の後半部は、ふたつの部分に分けられる。まずは1830年代のフランス社会を「後期近代」の開始と位置づけて、その消費社会のあり方を、市場の形成、視覚要素の強調、通信・交通のテクノロジーの発展から位置づけた。そして、同時代の社会主義やロマン派の言説を分析することに着手した。その一方で、現代のグローバリゼーションにおけるマルチモダリティ情報の分析という観点から、ドキュメンタリー映画と物語映画を分かつもの、またニュース、さらに史実と、諸言説がどのように適合し、どのように齟齬を起こすのかを分析した。 最後に情報分析における倫理的な問いを、現代政治の場面に照合しながら、カントの「道徳」、デリダの「正義」から、<想像力>の問題として、具体的にはフォーク・ソングやハリウッド映画を題材に、ジャンル分けした。
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