研究概要 |
今年度の研究実績は以下の通りである. (1)ヒト幼児の問題解決場面における行動解析 ヒト幼児が如何に新奇な問題解決場面において既存の知識を用いるか,TVゲーム(おにごっこ)課題遂行時における行動記録の解析をおこない,行動決定に至る認知過程の計算論的な推定をおこなった.その結果,ポテンシャル法とDP法を組みあわせた計算モデルによりヒト幼児の行動決定過程が推定でき,環境中のどの対象に注意を向けるべきか,それまでの発達過程において獲得した知識を適切に使用しながら幼児が行動決定をおこなっている可能性が示された. (2)ヒト幼児・成人・および動物における問題解決 ヒト幼児における問題解決について,「問題箱」等の人為的な物体による場面と折り紙作成場面とを用いた実験/調査手法の検討,および比較対象となるヒト成人・ヒト以外の動物における基礎的実験/調査手法の検討をおこなった.ヒト成人では,折り手順の知識よりも,「折る行為」に対する知識と実際の行動との協応を如何におこなうか,という点が課題遂行において大きく関与し,運用される知識を単純な知識とメタ的な知識とに分けて検討すべき点が明らかになった. (3)問題解決を導く認知処理モデルの構築 獲得した知識をいかに変化し続ける環境における問題解決場面に利用するか,その認知過程を計算過程として理解するため,計算論的モデルを構築しシミュレーション環境において提案モデルの妥当性について検討した.その結果,行動のプラン策定をおこなうトップダウンプロセスと,環境の変化に即応して自身の行動を変化させることの出来るボトムアッププロセスの両プロセスを融合させた行動決定モデルが,変化し続ける環境において柔軟に課題解決をおこない,同時にヒトの課題解決場面で見られる不適応行動(マイクロスリップ)様の行動も生起することが示された.
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