研究概要 |
今年度の研究実績は以下の通りである. (1)問題解決過程の認知処理モデルの評価・検討 本年度はまず, ヒト幼児の問題解決場面における既存の知識の利用過程について, TVゲーム課題遂行時の行動決定過程の計算モデル的解釈および研究手法としての方法論の提案とその問題点についての議論をまとめ, 学術論文として投稿した. 現在出版に向けた準備状態にある. また, ヒト成人の問題解決場面における獲得済の知識を利用するプロセスを対象に, 行動のプラン策定をおこなうトップダウンプロセスと, 環境の変化に即応して自身の行動を変化させるボトムアッププロセスの両プロセスからなる行動決定モデルの妥当性について, ヒト成人における行動プラン策定過程の記録とその自己評価により検討した. その結果, 獲得済み知識を活用するトップダウンプロセスの解像度をボトムアッププロセスを制御可能な解像度に調節する過程の存在が示唆された. この過程は自身が行った行動の成否のフィードバックを受けた自己評価として作用していると考えられ, 認知処理モデル・計算モデルとしての定式化が今後の課題となった. (2)動的環境におけるヒトの問題解決 動的環境におけるヒトの問題解決過程は, 新規スキルの獲得場面および他者との協同問題解決・社会的やりとり場面の3種類の行動実験により検討した. 新規スキル獲得場面では, 自己の知識や行為のプランのトップダウンプロセスとしての獲得とボトムアッププロセスによる自動調節が行われ, トップダウンプロセスはボトムアッププロセスを制御する明確なメタ過程として作動する必要性が明らかになった. また, 他者との協同問題解決・社会的やりとり実験の結果から, 予測できない他者の行為が動的な環境として作用した結果, トップダウンプロセスにおけるリプランニングとボトムアッププロセスにおける行動の中止・変更が多発し, トップダウンプロセスにおけるリプランニング過程の詳細な解明と定式化が必要となった.
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