研究概要 |
手を用いて物体を回転させ, 景観の変化を観察すること(能動的観察)によって後の物体認知が促進されることが示されている(Sasaoka et al., 2005). 平成20年度においては, 平成19年度から引き続き, 能動的観察を行う際の手の回転方向と, 物体の回転方向によって, 後の景観の般化成績に及ぼす効果について検討を行った.横方向の回転の能動的観察を行う際に, 手の回転方向と物体の回転方向が一致している場合に, 不一致の場合に比べ, 後の横方向の回転に対する般化成績に有意な促進が見られた.さらに, その促進効果は時計回りの回転より, 反時計回りの回転において強く見られた.このような促進効果の非対称性は, 手の回転と物体の回転が一致していない場合には見られなかったことから, 手の身体的制約に起因する可能性が考えられ, 物体認知に身体性が関与することを示唆する結果と言える. 能動的観察による促進効果は, 能動的観察を行った物体と同じカテゴリに属する, 異なる物体の認識において観察されたことから, 能動的観察によって物体カテゴリ特有の視点変換規則が獲得されたと考えられる.この視点変換規則の物体カテゴリに対する固有性について検証するため, あるカテゴリに属する物体の能動的観察が別のカテゴリに属する物体の認知を促進するか心理実験を行って調べた.その結果, 能動的観察が別のカテゴリに属する物体の般化成績に与える促進効果は限定的で, 同じカテゴリに属する物体の般化成績に与える促進効果に比べて小さかった.この結果は, 能動的観察によって物体カテゴリ固有の視点変換規則が獲得されていることを支持している.
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