研究課題
オカダンゴムシの触角の旋回運動が、自動的な走査ではなく、能動的な探索を含むことを明らかにするため、触角の鞭節(機械感覚子が最も多い先端部)に付属器を装着し、旋回周期が変化するといった量的な変化ではなく、運動様式が変化するといった質的な変化が生じるかどうかを調べた。当初の計画ではマスカラを塗ることが予定されたが、含有化学物質の化学感覚子への影響等を懸念し、テフロンチューブを被せることに変更した。その結果、実体顕微鏡下で、無麻酔かつ無接着剤で装着することができた。これまでに、左側及び右側のみの装着群、両側の装着群(それぞれN=2)の行動を、壁で囲まれたアリーナ内で観察した。どの実験群でも、チューブを装着された触角は、壁に触れていないときにはチューブを装着されていない個体群と同様の旋回運動を生じた。しかし、壁に触れると、実験当初は、その形状は根元から折れ曲がったようになり、触覚を得る機能を果たしていないかのように見えた。また、触角を失った個体のように、頭部が常に壁へ触れていたため、移動様式もぎこちなかった。しかし、数十分もすると、触覚の形状は弓状に変わった。この様子は、個体は壁へテフロン部を積極的に押し付け、得られる新しい接触感覚と関節からの運動感覚の統合で、壁を知覚しているように見えた。頭部は壁から離れ、体軸は壁と平行になり、移動様式も滑らかになった。また、ある個体は、方向転換する際、わざわざチューブの装着された触角で壁を叩くという特異的な行動を行った。以上のような触角運動の可塑性は、オカダンゴムシの触角の旋回運動が、元来自動的な走査ではなく、能動的な探索という自発的機能も含むことから、その一側面として現れたと考えた。
すべて 2007
すべて 雑誌論文 (1件)
Lawrence Erlbaum Associates (Studies in Perception & Action IX (Cummins-Sebree, Riley, Shockley eds)) (印刷中)