研究課題
ヒトのもつ協調的な社会的知性の進化的基盤を探るため、比較認知心理学的観点から、類人猿2種(チンパンジーとボノボ)における協力行動についての特徴を探り、両種間で比較する実験的研究を実施した。チンパンジーを対象とした実験は、林原生物化学研究所類人猿研究センターでおこなった。2個体のチンパンジーがペアになる場面、もしくは1個体のチンパンジーと1個体のヒトがペアになる場面を設けて、この2個体が同時に紐を引っ張ることによって食べ物を得る課題を実施し、記録として得られたビデオ資料を解析して特徴を探った。さらに、2つのボタンを2個体のチンパンジーがそれぞれ1つずつ同時に押すことでジュースが得られる課題を実施した。その結果、紐を引っ張る課題で協力することを習得したチンパンジーのペアも、それとは異なる課題であるボタンを押す課題となると協力的行動が成立しなかった。また、両課題を通じて、相手とタイミングを合わせるためにアイコンタクトを取る、身振りで合図を送るといった行動はまったく観察されなかった。協力的場面におけるチンパンジー同士のコミュニケーションの成立が困難であることが示唆された。その一方で、チンパンジーとヒトがペアになる場面では、チンパンジーがヒトの手を取って協力を催促する行動が2種類の課題場面で共通して出現した。相手との日常場面での交渉の質的違いや経験の違いが、こうしたコミュニケーションの出現の違いとして現れていることが考えられる。ボノボを対象とした研究は、コンゴ民主共和国のボノボ・サンクチュアリで飼育されている53個体を対象として実施することを計画し、現地に赴いて予備的観察をおこなったうえで、現地の環境に合わせて実験手続きを確立した。また、チンパンジーとボノボの日常場面での社会交渉の質的違いについて確かめるため、実験以外の場面での自発的交渉パターンを観察してビデオ記録に収めた。
すべて 2007 2006
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