研究課題
マルコフ連鎖モンテカルロ法は、特に3次元以上の高次の分列表の解析において、さまざまな交互作用の有無を統計的仮説検定の枠組みで検証するための有効な方法のひとつである。これは数学的には、マルコフ基底と呼ばれる、標本空間上の連結な推移基底を求める問題に帰着することが知られている。本研究は、この、マルコフ基底の計算アルゴリズムの改良、およびマルコフ基底のさまざまな性質の解明に関する研究を行った。昨年までに得られた、極小なマルコフ基底の構造定理に関する結果の加え、本年度は、まず、マルコフ基底の対称性に関する代数的な研究と、極小不変マルコフ基底の性質の解明(文献1)を行った。また、実験計画法における一部実施要因計画でのさまざまな仮説検定の問題をマルコフ連鎖モンテカルロ法で解くことを念頭に置き、水準数が2の直行表の仮説検定に対するマルコフ連鎖モンテカルロ法の理論の整備と、対応するマルコフ基底と高次分割表の関連に関する研究(文献2)を行った。さらに、極小マルコフ基底の構造定理を拡張し、極小マルコフ基底の必須要素の性質解明と、これまで未知であった、一意的でない極小マルコフ基底の性質について、分解可能モデルの場合を例にとり、性質の解明を行った(文献3)。いずれの結果も、統計学における分割表解析の問題を扱ったものであると同時に、計算機代数学におけるトーリックイデアルの研究という意味を持ち、統計関連学会のみならず、代数学、主にグレブナー基底の国際学会、研究集会において、成果発表を行った。
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Annals of the institute of Statistical Mathematics (To appear)
METR Technical Report. Department of Mathematical Engineering and Information Physics, The University of Tokyo 2006-56
METR Technical Report. Department of Mathematical Engineering and Information Physics, The University of Tokyo 2006-66