研究課題
マルコフ連鎖モンテカルロ法による分割表の解析は、特に分割表が3元以上の高次の場合に有用な手法である。これは数学的な問題としては、マルコフ基底とよばれる連結な推移基底を求めることに帰着される。本研究では、このマルコフ基底の効率的な計算手法の開発と、マルコフ基底の構造の解明に焦点を絞った研究を行っている。2008年度は、まず、前年度からの継続のテーマとして、マルコフ基底として自然な対称性を持つものについて、その特徴付けと、構造の解明を行った。さらに、新たなテーマとして、問題が、代数学の分野でその特徴がある程度解明されつつある、Segre-Veronese型と呼ばれるものについて、被約グレブナー基底を利用したマルコフ連鎖モンテカルロ法の提案を行った。この研究は、トーリックイデアルのグレブナー研究の第一人者である、日比孝之教授、大杉英史准教授との共同研究として実施され、純粋数学の最先端の理論研究が、応用統計学の実問題に結び付くことを示した、意義のある研究となった。例えば、4番目の文献では、応用例として、センター試験データの解析や、遺伝子データの解析に、Segre-Veronese型配置のグレブナー基底の理論を使っている。さらに、実験計画法の分野においても、因子の水準が3の場合の多因子要因計画に対する要因効果の検定問題が、マルコフ連鎖モンテカルロ法で行えることを示した。この研究では、実験解析データを、高次分割表との対応として捉えており、実験計画法の問題に対する新たな視点を与えるものであるといえる。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (5件)
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