医学統計分野での連続型反応の多変量経時測定データ解析で有用な統計モデルの新たな開発を行っている。多くの疾患分野で複数の検査値相互の経時的関係に医学的興味があり、臨床試験でも複数の検査値を測定しているが、多変量経時測定データ解析に関する研究はまだ少ない。研究者が近年新たに提案している自己回帰線型混合効果モデルは反応を直前の反応と共変量に回帰する自己回帰モデルを医学データに適合するように拡張したモデルであり、個体ごとにある均衡値に達する推移を単純な線型モデルの枠組みで表し、多変量への拡張も容易と考えられる。しかし、医学統計分野では自己回帰モデルに関する研究は非常に少なく、誤解されている点が多い。一方、自己回帰は経済学での時系列解析、経済学・人文社会科学でのパネルデータ解析、空間データ解析と密接に関係するため、他分野での統計モデルの調査を行っている。本年度は、1変量自己回帰線型混合効果モデルを論文として公表した。また、実際に慢性腎不全維持透析患者における二次性副甲状腺機能亢進症の治療での副甲状腺ホルモンと血清Ca濃度の2変量経時測定データの解析を行い、2変量自己回帰線型混合効果モデルに基づく統計モデルを開発している。今後2変量自己回帰線型混合効果モデルを論文として公表する予定である。他分野の調査に関しては、近年パネルデータ調査の発展とともにパネルデータ解析が急速に発展してきており、これを中心に調査を行っている。
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