本年度は繰り返し測定データに対する時変係数を有する一般化線形モデルの推測法の開発を行った。局所多項式近似に基づく推定法を開発し、その理論的性質を明らかにした。このモデルに対して、他の推定法の提案が最近なされ、我々の接近の意義をより明確化する必要があり検討中である。また、Cheng et al(2000 Biometrika)により提案されたセミパラメトリックモデルのモデル診断についての研究を併せて実施した。この方法は本プロジェクトが対象としている計数過程による繰り返し測定データの解析手法に属する方法であり、これまでこの方法に対するモデル診断の方法は議論されてこなかった。繰り返し測定データに対しては、一般化推定方程式GEEに対する累積残差によるモデル診断がLin et al(2002 Biometrics)により議論されてきた。本研究が対象とするモデルでは残差が平滑化に依存してしまうが、工夫を加えることで平滑化に依存しない形で累積残差によるモデル診断法を開発し、その理論的性質を調べた。この方法ではモデルを構成する2つの部分を診断する2つの統計量によるため、多重性の問題が生ずる。ある種のリサンプリング法により、多重性を考慮したオムニバス検定を構成した。現在はその数値的な性質を調べている。この研究は当初の研究計画とは異なるものであるが、本研究が意図していた時変係数を有するモデルへの拡張が期待されるものである。以上の研究結果は未発表であるが、平成19年度に行われる2007 Taipei International Statistical Symposiumにおいて発表する予定である。
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