本年度は、繰り返し測定データに対する計数過程に基づくセミパラメトリック推測に関する累積残差による回帰診断法に関する研究を実施した。手法の構成と理論的な考察はすでに昨年度に中心的な部分は完了していたが、本年度は理論の細部を詰めるとともに、計算を実施するプログラムコードを作成し、計算機シミュレーションにより提案法の有効性を検討した。提案法は100例程度の実際の臨床試験に現れる程度の大きさのデータに対しても有効であることが確認できた。またC型肝炎症例に対する無作為化臨床試験データに適用し、試験期間を通じて治療効果が一定と仮定して設定した統計モデルが不適切であることを見出した。論文を作成し、現在投稿である。また、脱落を伴う繰り返し測定データに対して頻繁に用いられるIPCW法に対する局所影響度分析手法の開発を行った。近似的に影響度を評価する方法を導出し、計算用のプログラムードを作成した。IPCW法は、関心のある回帰係数を得るために、複数の回帰モデルを当てはめるが、したがって、関心ある回帰計数の推定は、これらの複数の回帰モデルの特定に依存することになる。我々の方法は、各症例の関心ある回帰係数への影響を、各回帰モデルに起因する部分に分解する式を与えており、推定に要する一連の回帰モデルのどの部分を改善すべきかのヒントを与える。この性質から、効率的にIPCW法に必要な回帰モデルの改良を行うことが期待できる。現在は、提案法の有効性を確認するべく、実際のAIDS症例に対する臨床試験データへの適用を行っている。
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