研究概要 |
本研究は地球潮汐による応力変動と地震活動との関係を定量的にモデル化することを通じ,地球潮汐以外の要因による応力変動に対する地震活動の変化について一層の理解を深め,地震発生予測の精度向上への貢献を目指すものである.地球潮汐による応力変動は複数の周期成分の足し併せであることを考慮し,今年度は月齢に相当する成分に着目した解析を主に行った. データとしては1995年兵庫県南部地震の震源域に隣i接する丹波山地の微小地震カタログを,手法には点過程モデルを用いた.地震活動全体を「長期的なトレンド」「余震などのクラスター性」「月齢成分との相関」の3因子で表した.各因子は地球物理学および統計学の観点から鑑みて適当なパラメトリック関数で表し,月齢成分と地震活動との相関の有無,および相関の時間変動について調べた.その結果,兵庫県南部地震後,統計的に有意な相関が見られる一方で,兵庫県南部地震前には相関はないこと,また相関の強さは兵庫県南部地震直後に最も顕著でその後時間経過と共に減衰していくことが分かった.兵庫県南部地震の断層運動が,丹波山地の応力を増加させたことが他研究により既に指摘されている.このことと併せると,兵庫県南部地震後,応力状態が臨界状態に近づいた結果,地球潮汐による微小な応力変動に地震活動が反応するようになり,その後の地殻応力緩和の結果,相関の強度が減衰していったと解釈できる. さらに,上述の3因子をどのように組み合わせるべきかについても考察した.従来の研究では3因子の和で地震活動全体を表すモデルが提案されている.しかし,最近の地震学の知見からは,「トレンド」と「クラスター」の和に「相関」を掛け合わせるモデルがより適切である可能性が指摘されている.両モデルをやはり丹波山地の微小地震データへと当てはめモデル比較を行ったところ,後者のモデルが有意によいことが確かめられた.
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