研究概要 |
本研究は地球潮汐による応力変動と地震活動との関係を定量モデル化することで,地球潮汐以外の要因による応力変動に対する地震活動の変化について一層の理解を深め,地震発生予測の精度向上への貢献を目指すものである。地球潮汐による応力変動は様々な周期成分の足し合わせであり,ここでは特に月齢に相当する成分に着目している。今年度は,特定の関数型を仮定せずベイズ的な考え方に基づき,潮汐の月齢成分と地震活動との相関の時間変動を柔軟に捉えるための統計的手法の開発を行った。平成18年度の研究では,丹波山地の微小地震力タログにパラメトリックモデルを適用し,有意な相関の時間変動を見出すことが出来た。そこで,このデータを改めてベイズ的な手法で解析したところ,パラメ。トリックモデルを適用した場合と概ね同様の傾向を捉えつつも,地球物理的観点からよりもっともらしい時間変動の様相を得ることが出来た。この手法開発により,より広範な事例に対し,地球潮汐と地震活動との相関を検出出来るようになったという意義がある。 また,地震活動解析においては,そのデータ(地震カタログ)の時間的な均一性がしばしば問題となる。特に大地震発生直後は,一時的に地震検出率が低下していることが知られているが,実際にどの程度の割合で地震が欠測しているかを定量的に調べた研究はない。そこで,やはりベイズ的なアプローチに基づき,滑らかかつ柔軟に地震検出率が時間変動するような統計的手法を用いて,欠測率を定量的に見積もった。一例として,グローバルな地震カタログへの適用を行ったところ,マグニチュード7以上の地震が起きると,半日から1日程度,全世界的に地震検出率が低下していることが確認出来た。但し,欠測率自体はさほど大きいものではなく,地震検出率低下の影響を無視しても地震活動解析において実際的な影響は殆どないことを示せたという成果があった。
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