研究概要 |
本研究は地球潮汐による応力変動と地震活動との関係を定量的にモデル化することで, 地球潮汐以外の要因による応力変動に対する地震活動の変化について一層の理解を深め, 地震発生予測の精度向上への貢献を目指すものである.地球潮汐による応力変動は様々な周期成分の足し合わせであり, 本研究では特に月齢に相当する成分に着目している.前年度までは今年度は, 潮汐の月齢成分と地震活動との相関の時間変動に関する統計的手法の構築を行ってきたが, 今年度はこれを時空間モデルへと拡張する試みを行った.モデル式が複雑であるがゆえに, ベイズ的な手法に基づくノンパラメトリックなアプローチにはコンピューターによる計算時間やメモリ量の限界があり, パラメトリックモデルへと立ち返り解析を行った.地震活動全体を, 点過程モデルにより「長期的トレンド」「余震などのクラスター性」「月齢成分との相関」の3因子で表現するが, 各因子が時間的だけでなく空間的にも変化するようなモデリングを行い, 丹波山地の微小地震カタログへの適用を行った.実際の地震活動は空間的な不均一性が大きく, 時間変動のみを考慮したモデルでは非常に狭い領域の地震データにのみ対象を限った解析を行うことが現実的である.しかし, 本研究のように時空間モデルを適用することで, 広域のデータを一度に解析することが可能となるという意義があると考えられる. さらに, 昨年度行った, 地震活動解析において問題の一つとなる地震カタログの均一性に関するベイズ的解析については, 論文としてまとめ.出版することが出来た.
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