平成18年度は、開発した心室筋細胞発生過程の代表的4時点のモデルの間を結ぶための手法について検討した。数値計算クラスタを構築し、ソフトウェアとしては細胞シミュレーション環境E-Cell3を用いてシミュレーションを実行した。心室筋細胞の数理モデルとして、野間(京大・院医)らの開発したKyotoモデルを用いているが、開発者の研究グループと議論の機会を持ち、基盤となるモデルの妥当性についても検討、確認した。その結果、胎生初期のモデルに関して、シミュレーションを用いて探究するに値する事象を見いだしたので、平成19年度中に解析を進める予定である。 4時点のモデルを結びあわせ、連続的に発生過程を再現する連続モデルの構築のために、胎生初期から胎生後期、新生仔期、成体の順に1段階ずつ次の段階へと推移するモデルの開発を進めた。自動能の有無、膜電位時系列の類似性を指標とした評価関数を作成し、これを用いて、遺伝的アルゴリズムによって次の段階のモデルへと推移していく経路を探索した。各段階を結ぶ経路を見いだすことはできたが、この経路上の各世代(時点)において、生理学的に妥当な表現型を有しているかを検討する必要がある。また、評価関数に含まれるべき要素についても、単に活動電位の時系列の類似性だけでなく、不応期の長さなどを考慮する必要があるかもしれず、今後、評価関数についてもバリエーションを用意して、最適な評価関数の確立を目指していく。
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