モデル植物であるシロイヌナズナを3次元形状計測し、コンピュータ上で3次元形状モデルを再構築し、形状モデルベースで表現型の解析や変異体スクリーニングを行う手法の確立を目的としている。昨年度に、マイクロX線CTを用いて野生型Columbia系統やトライコーム変異体系統の個体形状3次元モデル化を行い、研究発表や論文投稿を行った。本年度は、植物の葉の標準形状モデルの定義を行い、この標準形状モデルを使って変異体の空間的な遺伝子発現値を、画像解析技術を使って定量抽出する応用研究を試みた。マイクロX線CTでは、植物形状データしか収集できず、遺伝子発現値は得られない。そこで2次元画像ベースでルシフェラーゼ発光量から遺伝子発現値を計測する装置を使って、2次元画像情報を収集した。最終的には、2次元画像ベースから3次元標準モデルに発現値を疑似カラーマツピングする事を考えているために、位置合わせの為の形状モデルが不可欠である。そのための位置情報として、葉や根の2次元標準形状モデルを提案した。また標準形状モデルの構成点(ランドマーク点)をパラメータとして定義した。具体的にはphoton countingカメラシステムを使い、理研PSCで開発されたシロイヌナズナのLuciferase Tagging Lines を用いて2次元発光発現の時系列画像データを収集し、形状モデルをあてはめて構成点から発現値を定量化した。解析の結果、主根と側根との空間的な発現伝播方法が異なる事を示した。また本葉と子葉とでは、サーカディアンリズムなどの生体リズムの周期が異なる事を示した。これは、生体リズムが組織特異的であるという、既存の知見報告と一致する結果であった。また拡散反応モデルを応用することで、葉面上の遺伝子発現値の空間伝播速度を推定した。これらの解析結果は、平成20年9月の植物学会のシンポジウムにて発表を行った。
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