哺乳類では、毎日一定の時間帯でのみ餌が得られる環境(制限給餌)に置かれると、行動や様々な生理機能の概日リズムが摂食のタイミングに同期する。この食餌同期性の概日行動パターンは、視床下部視交叉上核(SCN)とは独立の生物時計(食餌同期性クロック、FEO : food-entrainable oscillator)により支配されると考えられているが、食餌同期性クロックの存在部位は明らかになっていない。 申請者は時計遺伝子mPer1の発現リズムを指標に用い、視床下部背内側核(DMH)が食餌同期性クロックとして機能する可能性を示した(PNAS 2006)。DMHの食餌同期性クロックとしての機能を検証するため、Cre/loxP組換えシステムによりCry1蛋白質を組織・領域特異的に過剰発現させることで、 DMH特異的に分子時計機構を阻害することのできるトランスジェニックマウスの作成を試みた。現在、得られたラインにおけるトランスジーンの発現を検討中である。また、CreをDMH特異的に発現させるツールとして、ニューロンで効率よくCreを発現する組換えアデノウィルスを作成した。さらに、DMH時計ニューロンに発現する2種類の神経ペプチド遺伝子を同定した。これらのペプチドは食餌同期性クロックからの時間情報を標的神経回路に伝える神経伝達物質として機能する可能性が考えられ、現在同遺伝子欠損マウスでの食餌同期性概日リズムを解析中である。
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